Curious Cat

RAYSTORM

Episode 2

届かなかったセシリアへの手紙

 - 略 -
だからといってその答えが最善のものだとは私にはどうしても信じる事ができません。何故ならば、貴方が意志決定をする上で非常に重要な要素の一つを、私は知り、貴方は知らないからです。実はその事を伝えるべきなのか、伝えずにいるべきなのか、何日も苦しみましたが、それが貴方自身の事だけではなく、この世界にとっても重要な意味を持つものなのかも知れないと考えペンをとりました。先月、BPIの人工脳システムの設計が終了した為、長期の休暇を取り久しぶりに実家に帰った時、ふと思いついて屋根裏部屋にのぼり、何の気なしに書棚の奥で埃をかぶった一冊の日記帳を手にしたのです。そこには、2人がまだ若く輝いていた頃の懐かしいエピソードがぎっしりと詰め込まれていました。しばらく時の経つのも忘れて見入っていた私はあるページのところで、金縛りにあったように動けなくなったのです。そこにはライカミルの寮に引っ越ししてまもない頃の貴方が、毎晩同じ夢にうなされる、という話が書いてあったのです。かれこれ 10年前の事ですからもう貴方は覚えていないかも知れませんが、その夢の内容とは、セシリアの独裁者の陰湿な挑発にのって我が国が武力制裁を行うというものでした。夢の中の貴方は敵地のメインコントロールシステムを破壊するという非常に重要な任務を与えられ無事やり遂げるものの、その瞬間、セシリアに存在するすべての都市が連鎖反応を起こし壊滅するという内容だったのです。思い出してもらえたでしょうか?では、もう一つ思い出して下さい、その独裁者の名前を…。そうなのです、今貴方が戦っている相手、憎むべきその男の名前がそこには書かれていたのです。10年も前の古い日記帳に、それも一字一句違わぬ綴りで…。その場所に座り込むほど動揺した私は、その夢に関する記録がないか、急いでページをめくりました。すると、その2週間後の日付のところに、(同じ夢が続きすっかり不眠症になった為、臨海特別区のODS精神科学研究所に行きカウンセリングを受けるらしい。4時に病院前で待ち合わせする。)と書かれてあったのです。それを読んだ私は昔の記憶を頼りにすぐに車を走らせ特別区へと向かったのですが、10年前と同じ場所に車を停めた私の目の前には、古ぼけた雑居ビルが建っていたのです。急いで車を降りてそのビルの管理人に事情を聞くとそんな病院は知らないし、そもそもこのビルは15年前に建てられた物だと言い張るのです。電話帳で調べても、周辺の住民に聞いても、そんな病院は見たことも聞いたこともない、という返事が返ってくるだけで、まるできつねにつままれたような気分でした。すっかり訳がわからなくなった私は、翌日国立図書館に行ってあの男の経歴を徹底的に調査してみました。もしかしたら、10年前からあの独裁者が新聞やTVを賑わせるような事件を起こしていたとしたら、その記その記事を読んだ貴方が、それを潜在意識識の中にしまいこんで、夢に見た、ただそれだけの事だったのではないだろうか?そう推論したのです。しかし、期待は裏切られました。あの独裁者は4年前までの経歴は一切不詳になっており、人々の前に初めて姿を現したのが、まだ記憶に新しい、例のクーデターとそれに続く移植者の大量殺戮事件だったのです。その夜からでした、私の身の回りでもおかしな事が起こり始めたのは、まず夜中に何度も無言電話がかかり、次の朝玄関の前にカラスが死んでいたり、車のブレーキが故障したり、ポストが荒らされたり、そんな気味の悪い出来事がしばらく続きました。

 それからはあまり目立たないように細心の注意を払い、超常心理学や精神医療の研究室に通い、今回の“予知夢”について徹底的に調査をすすめたのですが、何一つ満足のいく解答を得る事はできませんでした。そして半分あきらめかけていた時にふと、考古学の権威であった貴方の祖父の話を思い出したのです。あなたが子供の頃、お祖父さんの膝の上でよく古代の人々の生活や文明についての話を聞くのが好きだった、という話を…。藁にすがるような気持ちで貴方のお祖父様の研究論文を読みあさり、遂に晩年の研究対象だった超古代文明のオーパーツの中に、その答えを見つけたのです。それは中央砂漠から発掘された石の神殿の柱に刻まれていた叙情詩でそこに貴方の見た夢とほぼ同じ情景の描写が綴られていたのです。つまり貴方が10年前に見た夢は予知夢ではなく、2万年前に記録された実際の出来事、もしくは2万年前に予言されたものだったのです。これを見た瞬間私に閃いた直感は、(一物理学者のはしくれとしては書いてはならない事かもしれませんが)、突拍子もないものでした。笑って頂いても構いません。私自身も半信半疑なのですから。しかし、地質学、物理学、宇宙工学からみたセシリアと地球両者の比較はこの私の直感を裏付けるものでした。この直感が正しければ、二つの惑星を結ぶMOON GATEには時間のずれが生じており、我々がセシリアだと思っていた惑星は実は太古の地球なのではないだろうか。そして2万年前に行われた事が今まさに繰り返されるのだとしたら地球の歴史がよじれメビウスの環のように延々とループしているという事になるのです。そこで幾つかの疑問が生まれます。もし貴方が作戦を実行しなかったら今の地球はどうなるのか?私の調査を妨害した人々は一体誰何なのか?そもそもお祖父様は貴方に何を伝えようとしたのか?これらの疑問についての解答は私の想像力の限界をはるかに超えていますし、恐ろしくて考える気にもなりません。私がお話したかった事は以上です。単に貴方を混乱させるだけの手紙だったかも知れませんが、これから先の事はあなた自身が考え、そして決めて下さい。それではくれぐれもお身体に気を付けて…。

貴方の生涯の親友より
アレンジCD『NEU TANZ MIX』のブックレットに載っているものです。明らかな誤字脱字は修正しています。

フォ-スで開発側とサウンド側の食い違いの話をしましたが、ストームでも起こっています。この文章でサウンド側には“セシリアは太古の地球”という設定があることが分かります。【Words】を見て頂ければ分かりますが、セシリアは“セシリア星系第2惑星セラフィムの第2衛星”とあり、地球は “太陽系第3惑星”です。さらにセシリア星系の主恒星は“伴星セレスタルを伴う連星”とあり、もちろん太陽は連星ではないです。地球とセシリアを=(イコール)で結ぶにはかなり(このストーリーは)無理がある設定なのです。
…しかし強引に=イコールで結べないこともないです。太陽が元は連星で、後に合体したと仮定します。連星が合体した際のバースト波によって惑星を削り、衛星を惑星に繰り上げたりして数合わせをすれば、セシリア=地球にできます。セラフィムを蒸発させるのが都合良いです(笑)。

PS版レイストーム“EXTRA MODE”の【Ending】で、地球が消滅していたのは“セシリア残存艦隊に破壊された”からですが(【History】参照)、“セシリア<太古の地球>を破壊したから”と考えることもできます。開発側とサウンド側で設定は違うものの、迎える結末がどちらも“地球とセシリアは消滅”なのです。
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